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次世代Timeの現在地 2

TimeのR&Dマネージャーのザビエル・ルサブシャールのインタビューの 2 回目。

前回、快適性には振動を抑制する動的快適性とジオメトリーによる静的快適性があるという話をしてくれたザビエル。自転車選手としての経歴は14-15歳のときにはBMXの選手として国内選手権 9 位という戦績を残し、以後は20歳までロード選手として活躍。

スイスのジュネーブにある工科大学を卒業。1998年、自作のカーボンフレームをR&Dマネージャーだったジャン・マルクに見てもらったのをきっかけに入社する。2002年に退社し自動車関連メーカー、ガス会社で安全技術に関わる仕事を担当。16年にTimeに復帰し、R&Dマネージャーとして活躍中。

ザビエル02

ーー
走行感って、何種類の評価項目で考えるんでしょうか。

ザビエル
その質問にお答えするのは、とても難しいです。というのは、数字で表現できる要素と感覚でしか表現できない要素の両方を含むからです。たとえば、ジオメトリーやチェーンステーの太さを変えれば、それは数字で表現できる。重量もそうです。他にも、どのように負荷をかけたら、フレームがどのように変形するのかというの数字で表現できます。また、それによってフレームの違いというのをチェックすることも可能です。

ーー
感覚領域だと。

ザビエル
走行感なので、測定はできないんです。そこで、技術者のフィードバックをもとに、走ったときの感覚をメモします。

ーー
数値ではなく、言葉で評価する。

ザビエル
以前の自転車と比べて疲れたか……という質問を設定するとしたら、 1 〜10のポイントをつけて評価します。ひとりの評価ではデータとしては意味がないので、20人が同じ反応を返すかどうかテストします。また、同じところを走行して、どのような違いが生まれるかも調べます。

ーー
評価はコース次第でもありますよね。

ザビエル
ええ。私の家の近くにいつも走るコースがあって、今朝はサイロン ディスクという剛性のある自転車で、4カ月前は同じコースでアルプデュエズを走りました。両車はジオメトリも重量も違います。もっと言えば、アルプデュエズには上り用のカーボンホイールを装着しました。いろんな要素が異なりますが、同じような感覚で走ってタイムが10〜15%ほど短縮されました。テスターの感覚に頼って、それを記述して、評価していくという面においては、さらに研究が必要です。これをグローバルパネルと我々は呼んでいますが、いろいろなテスターにライドしてもらった感覚を記述して、分析する作業を進めています。

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ーー
では、まだ良くなっている課程ってことですね。

ザビエル
そうです。まだテスト項目を明確に答られない状態です。ただ、研究&進化してきたことは間違いないし、“Timeらしさ”への理解が深くなったということは言えます。とはいえ、さらに研究が必要で、もう少し具体的にお答えできるまでに、2~3年かかりそうです。

ーー
感覚の数値化ができたら面白いですよねぇ。

ザビエル
我々の親会社であるロシニョールでも、同じようなことを考えています。いいスキーとはナニか、と。多くのワールドカップレベルのスキーヤーをテスターとして抱え、非常に繊細な感覚を持ったスキーヤーたちからのフィードバックをもらって、いいスキーとは何かということを研究し続けています。

ーー
Timeも、ですよね。

ザビエル
Timeのテストライダーにはモーターサイクルのライダーがいます。Moto GPではありませんが、世界でもトップレベルの耐久レーサーを自転車のテスターとして抱えています。彼らはダンピングがどのように効いているか、ブレーキ性能がどうであるかとか、数字では表現できない部分も非常にうまく、繊細に感じとって表現する能力を持っています。

ーー
自転車選手じゃないのが面白い。

ザビエル
彼らの能力は本当に高いんです。フレームの変化を敏感に察知して、問題を指摘すると同時に、どうすべきか具体的にコメントが出せる。アクティブフォークのセッティングを決めるときも、チューンド・マスダンパーのセッティングをちょっと変えると、きちっと変化を表現してくれる。そういったレベルのテストライダーたちが“らしさ”を演出してくれています。

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ーー
以前から疑問だったんです。乗るのが上手なトップライダーに乗りやすいフレームと、下手くそなホビーライダーが同じ設計でいいのかなって。スキルも違えば、求める機能も両者に違いがありませんか。

ザビエル
もちろん違います。フィードバックされたデータは、市販するにあたって分析&加工されて製品化のヒントとなります。テストライダーの意見が役立つのは、どういった要素が重要かということを教えてくれるからで、本気でP・サガンに向いた自転車を作ったら、プロでも数人にしか扱えないという事態もあるでしょうね。

ーー
やっぱり、トッププロとは違いますよね。

ザビエル
どういったコンディションで、こんなライダーは、どういう剛性が必要で、どのような柔軟性や反応性が必要かを理解するためのテストライダーであって、彼らの言うことにしたがってものを作るわけではないのですね。

ーー
プロロード選手の意見は、また異なりますか。

ザビエル
現在、Timeはプロチームに機材を供給していないですけど、アクティブフォークを開発していたシーズンは、当初、一般的なクラシックフォークに乗ってもらいました。途中でアクティブフォークに替えると、もうクラシックフォークには戻さないでいいというフィードバックが返ってきました。 1 日中自転車に乗っているプロの意見はとても役に立ちます。ただ、やはり、それをそのまま製品化するわけではないんです。

ーー
上級者と初心者では、ライディングスキルに差がありますよね。そこは考慮しないものですか。

ザビエル
スキルに関しては、マルセイユ大学の協力を得て、人体工学的な分析をしている最中です。たとえば、どのようなペダリングパターンだと、足首を固定するタイプのペダリングなのか、そうじゃないのか。それによってパワーの出方が違うのか調べています。詳しくは言えませんが、分析をしている段階です。

ザビエル 2

ーー
パーツやセッティングによっても走行性能や走行感は変わりますよね。

ザビエル
ええ、全然違います。

ーー
全体を通して、フレームが担う比率というのは、どれくらいあるんでしょう。

ーー
Timeの考えでは、フレームはパフォーマンスの50%を担っています。

ーー
やはり、大きいですね。でも、パーツやセッティングも重要。

ザビエル
ええ、フレームは自転車の最重要パーツですが、一部でしかありません。他の比率としてはホイールが40%、それ以外が10パーセントだと考えています。

ーー
フレームとホイールで90%ですか。

ザビエル
一番大きな役割をしているのはフレームであり、次いでホイールもとても重要です。自転車の性能は全体としてとらえるべきだと考えていますので、ベストパッケージ、を提案していこうと考えています。

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ーー
そんなことが可能になる。

ザビエル
時期はお約束できませんけど、努力はします。このフレームには、こんなホイールとタイヤの組み合わせがいいという提案をしていこうと思います。サイロンであれば、ハイプロファイルのリムホイールで、タイヤの空気圧は……というような提案がしたいですね。アルプデュエズでは違うセッティングが望ましいだろうし、自転車を全体としてこれから提案していこうと考えています。

ーー
フレームって用途ごとに設計され、発売されていますよね。私ならヒルクライムが苦手なのでアルプデュエズを選ぶべきなのか、それともスタミナ不足をフルイディティで補うべきなのか、得意の平地を伸ばすためにサイロンを買うのが正解なのか……

ザビエル
それは非常に回答が難しいですね。長所を伸ばすのか、弱点を強化するのか、どちらの考え方も間違っていないと思います。さらに迷わすことを言うようですが、自分が住んでいるエリアの地形も関係するでしょうね。このあたりに住んでいるならアルプスが近くにあるので、自転車で走るとなれば自ずといろいろな峠に行くことになるでしょう。であれば、アルプデュエズがサイロンよりも向いていると言えます。

ーー
たしかに。

ザビエル
体格だって関係します。私は体重が80㎏ほどあるので、体重の軽い人と比べると剛性も必要になります。となると、アルプスに行くときも、やはりサイロンに乗ります。

ーー
優先すべき順番が分からない。

ザビエル
結局、その人のフィロソフィーというか、考え方で選んでもらうしかない。クライミングバイクとしてはアルプデュエズですが、私にとってはサイロンでアルプスを走るのが楽しいのです。

ーー
困りましたね。

ザビエル
ええ、非常にむずかしい。最近はtrainingソフトでエナジープロファイルを解析して、ユーザーにあったTimeの推奨モデルが提案されるモノもあります。どのモデルを選ぶのかは好みなので、正解を導き出すのは厳しいですね。

ーー
最後の質問です。次に出てくるニューモデルに期待していいこと、してはいけないことはありますか。

ザビエル
ひとつ言えるのは、アクティブフォークが進化します。振動が身体にどう影響を与えているのか、またパフォーマンスとの関連性について研究してます。振動が激しいと筋肉が収縮して、酸素の消耗が激しくなる。さらに筋肉疲労にも影響を及ぼしていることが分かっています。この先は新製品のプレゼンテーションのときに詳しく話ができるでしょう。

やったー
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ポディウム公式アカウントです。ヨーロッパのロードバイクシーンがナニを考え、どのように問題に取り組んでいるのか……をお伝えします。http://www.podium.co.jp/

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