完全無欠のレーシングバイク
見出し画像

完全無欠のレーシングバイク

チネリのアドバンテージの1つに、多様性が挙げられます。ニューヨークやサンフランシスコでは若者がシングルギアのバイクを駆り、地元ミラノや北イタリアではグランフォンドを楽しむハイアマチュアがいて、ドロミテの山塊の麓では“KING ZYDECO”でグラベルロードを楽しむ姿も見られます。また、“SUPERCORSA”や“LASER MIA”を思い浮かべるなら、あなたのようなエンスージアストな人たちもチネリのイメージを支えてくれる大切な友人です。

しかし、チネリのバイクの源流はどんなときもレースにあります。たとえば新作“PRESSURE”は、軽量性、空気抵抗、コストパフォーマンス……あらゆるシーンで死角のない完全無欠なレーシングバイクです。創業者であり、元プロレーサーのチーノ・チネリに始まるレースへの情熱が流れており、そのコアをアントニオ・コロンボ(現オーナー)の遊び心によってコーティングされているのです。

“PRESSURE”は『統合(Integrated)』をキーワードに開発されました。そこで、今回はセールスマネジャーのパオロ・バイレッティ、サブプロダクトマネージャーのアンドレア・ドナーティの2人をゲストに、専門誌等では語られてこなかった新作の素顔に迫ってみましょう。

画像1

「山岳コースのことは、忘れていい。“SUPER STAR”よりも空気抵抗が小さく、平地の高速レースに対応できるフレームがほしい」

パオロ “PRESSURE”の開発は2018年から始まりました。次に開発する高性能フレームについて、プロチームのコルパック・バランに意見を求めると、高速度域でのパフォーマンスを重視したリクエストが返ってきたのです。

アンドレア ハイスピードで高いパフォーマンスを発揮するには、空気抵抗を削減するのが効果的です。そこで気流の乱れを発生させるケーブルを排除し、かつ全体にクリーンな外観で仕上げたいと考えました。他にも電動シフターへの対応も考慮すると、FSAのACRシステムを採用するのが理想的だという結論に達したのです。

ー なるほど。しかし、ネットなどで、他のブランドと共通のフレームにペイントしただけ……と言った指摘もありますが、反論はありますか?

パオロ 最初に断わっておきますが、“PRESSURE”は100%、チネリの設計です。ただ、我々の販売量では金型代を全額負担できないので、生産を担当するサプライヤーも投資をしています。そのため投資に応分して、ほかのメーカーにもこの型を使っていいという契約をしているのです。そんな背景もあり、誤解を生じているでしょうが、設計はすべてチネリが行なっています。この情報は秘密ではなく、オープンにしています。それがフェアな態度であり、問い合わせがあれば広報部のフランチェスカも同じように答えるようにしています。

ー アンドレアは開発担当ですよね?

アンドレア はい、そうです。最初のプロトタイプを製作してから、3つのバージョンを経て最終版になりました。最初はチューブ形状が円いフレームでしたが、さらにエアロダイナミクスを向上させるため改良し、重量を上げずに剛性を出す方向に変更していきました。ファーストモデルよりは少し重いですけれど、パフォーマンスを重視したモデルで完全に我々のオリジナルです。

画像2

ー フレームのカラーリングは社員が投票して決めるそうですが、モデル名も同様ですか?

パオロ 基本的にはスタッフミーティングで決めます。このモデルに関しては社長のアントニオから“PRESSURE”でいこうと提案があり、他のスタッフも賛成しました。

ー BB裏にあるロゴを見ると、パンクバンド“The Clash”の“London Calling”にインスパイアされているように思えますが、なにかメッセージ性があるのでしょうか?

パオロ どうなんでしょう。理由は定かではありませんね。しかし、このフレームをデザインした担当のマルコは“The Clash”のポール・シムノンのベースギターにインスピレーションを受けたのは事実です。そして、オレンジとブラックの色遣いは、彼の好きなカイトサーフィンに影響を受けていると言っていました。

ー チネリらしい話ですね。

パオロ ええ。チネリは自転車が属していない世界、たとえばアートなどからインスピレーションを得るように努力しています。したがって、カラーリングやモデル名なども個性的です。

ー 開発時のコードネームはありましたか?

アンドレア 会議の前、このプロジェクトを記録したフォルダには、“Hyper Star”という名前でしたが、それも1時間で消えました。開発が進められていく段階で、プロトタイプの名前も“PRESSURE”1、“PRESSURE”2、というふうに進んできました。

画像3

画像4

ー そういえば、フォーククラウンの後ろ側にキャラクターデザインが施されていました。同じキャラをダウンチューブの下側や、BBにも施した過去がありますが、彼に名前はありますか?

パオロ まだ、ありません。日本のファンから提案があれば、それも検討対象にしましょう。私たちは常に「Happy to make another rider happy」というメッセージを発進し続けています。こうした小さなディティールに興味を持っていただけたことを嬉しく思いますし、これからも重要視していこうと考えています。

ー “PRESSURE”と上手につきあうコツやヒントはありますか?

パオロ あなたには向いていません……とは言いたくありません。しかし、すべての人に向いている自転車でないことも現実です。

トレーニングを積み、柔軟性を備えたシェイプアップされた身体のサイクリストが理想です。さらに言うと、剛性の高い自転車を乗りこなす経験があれば、より楽しめるでしょう。排他的な印象を受けるかもしれませんが、想像してみて下さい。クルマでも似たようなことが言えます。F1のレーシングカーもドライバーに要求するファクターが多いのは想像がつくでしょう。それと同じことが言えるのです。

アンドレア 必ずしもレースをする人じゃなくても、パフォーマンスを向上させようという希望を持っているライダーなら十分だと私は考えます。ただ、フレームの真価を発揮するという意味では、アルテグラ以上のグレードのコンポ、カーボンホイールを使うことを薦めます。タイヤは30㎜幅に対応できるようにクリアランスを設定しているので、最低でも28㎜以上のタイヤを選択してもらえると、転がり抵抗が小さく快適性も向上します。

基本的に剛性が高く、反応性に優れたフレームです。これはプロトタイプのときから一貫した“PRESSURE”のアイデンティティです。

ー かなりレーシーで、これまでのチネリとは少しトーンが違うように感じますが、ブランドとして新しい方向性を打ち出そうとしているのでしょうか?

パオロ これは自分の意見ですが……
現在、スポーツバイクの世界は急速に変化しています。プロツアーでの戦績や最高級モデルだけでブランドの価値を計るのではなく、自分のライフスタイルにマッチしているか? 移動を目的とするサイクリングを楽しめるか?……そういう判断基準を大切にする人が増えているように感じます。

チネリは非常に小さな会社ですが、伝統を持っていて、同時に現代的です。そして、サイクリストの身近な存在です。最近はグラベルライドが人気を集めています。この市場を動かしている人たちは他人と競うつもりもないし、ライドの後のビールを楽しみにペダルを踏む人ような新しいメンタリティーの持ち主です。チネリはロードやトラックレースで輝かしい戦績を残してきました。また、シングルギアやグラベルといった、新しい自転車文化が芽生えるときに、その先端に寄り添ってきました。これは巨大なメーカーにはない、チネリの資産だと思います。

画像5

ー 現在、未来のためにしていることを教えて下さい。

パオロ ご存知のとおり、製品になる数年前から開発はスタートします。なので、常にいろいろな研究を行っています。快適性とハイパフォーマンスを融合させていくという“PRESSURE”で取り組んだ課題は、今後も進化していくでしょう。

また、グラベルロードでは振動吸収性の向上がとても重要です。そのためミラノ工科大学と協力して、次世代バイクの研究をしています。他にも、スチールでは常に、より新しい合金はないかとか、金属の処理方法なども常に研究開発をし続けています。

テクノロジー面で進化したいと常に考えていますが、同時にカーボンコンポジットの世界はコモディティ化しています。そこから一歩抜け出すというのは、非常に難しいものです。そういった状況からチネリが一歩抜け出すため、大学や多くの研究機関の協力を得て、数年前から方向性を決めて研究開発を行なっています。

ー 最後の質問です。大手メーカーの一部では、サスティナブルな取り組みとして完成車の梱包用にリサイクル素材を使い始めていますが、チネリでも取り組んでいますか?

パオロ チネリは小さなメーカーですし、大メーカーほど環境に対して大きなインパクトを与えるような活動は不可能です。現状、カーボンコンポジットのフレームを製造していながら、サステナビリティについて何か語るのは、非常におこがましいところを感じます。

それでも、可能な限り、不用な廃棄物を少なくする努力はしています。たとえば、梱包の際に使用していた紙をプラスチックのバッグにするなどの工夫はしています。

さらに小さなことですが……オフィスに入ると、コーヒーマシンがあるスペースがあります、そこにカメの写真を貼り、彼らが誤って食べたり死なないように、プラスチックゴミの削減に取り組んでいます。小さいことですが、できることから着手するようにしています。

画像6


嬉しい!
ポディウム公式アカウントです。ヨーロッパのロードバイクシーンがナニを考え、どのように問題に取り組んでいるのか……をお伝えします。http://www.podium.co.jp/