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ワイドタイヤになって変わったこと、変わらないこと。

ロードバイクの走行性能を決めているタイヤ。現在、もっとも進化の激しいパーツだけに、どんどん常識も書き換わっています。そこで、Hutchinsonのエンジニア、ジョエル・バレさんに最新タイヤの性能を引き出すティップスを聞いてみました。

Q:新しいタイヤを選ぶときに考えるべきことは?

A:競技を目指すのか、それともレジャーを楽しむのか。あなたのサイクリングのスタイルを考えてみてください。それによって選択は変わります。高級タイヤで性能が悪いものはありません。ですが、選択が間違っていることはあります。例えば、時速20㎞でサイクリングを楽しむサイクリストが転がり抵抗の軽減を気にする必要はないでしょう。高級な製品、レース指向のタイヤを選びがちですが、自分自身のレベルに正直であるべきです。

Q:タイヤで悩みは解消できる?

A:すべてを解決できるわけではありませんが、タイヤの性能を狙い通りに引き出せるようになれば、問題を改善&軽減できます。そのためには正しいタイヤ選択と最適な空気圧に調整し、走行感をコントロールする感覚を身につけましょう。多くの人が抱えている悩みと、簡単な解消方法です。

疲労を軽減したい
疲労の原因はいくつか考えられますが、タイヤから疲労軽減にアプローチするなら、振動を軽減するのが効果的です。現在、使用しているタイヤの空気圧を少し下げてみるか、1サイズ太いタイヤを試してみましょう。ワイドタイヤは断面積が大きく、空気圧を低くできるので、しなやかな走行感で快適性を高めてくれます。

内幅19㎜のリムに28Cのタイヤを選択すれば、その効果は初心者でも体感できます。太いタイヤは走行抵抗が大きくなりそうですが、それは誤解です。28Cと25Cを比較すると、転がり抵抗が小さく、しなやかさに優れているのは前者です。快適性が高いので、ロングライドの終盤でもフレッシュな状態で走れます。トラック競技のような特殊な場合を除き、ワイドタイヤの優位性は想像以上と言っていいでしょう。

コーナーの進入で安心感を高めたい
不安や恐怖心を取り除くため、コーナリングスピードを少し下げましょう。その上で路面状況のつかみ取りやすいセッティングを探します。まずはグリップ感を向上させるため空気圧を少し下げてみてください。それでも改善しない場合は、28Cの高級タイヤの使用をオススメします。

我々のテストでは、タイヤを太くするとコーナリングスピードが上がり、不安感も減るという結果が得られました。ワイドタイヤはコーナリング時のハンドリングに優れるだけでなく、グリップ力も高くなります。高級タイヤは上質なコンパウンドを採用しているため、より高いグリップで限界性能を引き上げてくれます。

もっと軽い走行感にしたい
空気圧を上げて、転がり抵抗を小さくする。そう考える人が多いのですが、残念ながら間違いです。プロチームにも、空気圧を低く設定することで転がり抵抗が減少し、ライドの効率が向上することをデータで説得し続ける努力を行っています。

タイヤは膨らませすぎても、空気圧を低くしすぎても性能を発揮しません。ライダーと車両重量を足した重量に見合った最適な空気圧を見つけることが大切です。これはワイドタイヤでも一緒。空気圧は慎重に設定しましょう。

あなたが時速25~30㎞で走っている初心者であれば、試してもらいたい提案があります。フレームとタイヤのクリアランスに問題がなければ、32Cを使って見てください。ハンドリングはコントロールしやすくなり、振動吸収面から見ても快適性もプラスされます。テストの結果、転がり抵抗に関しては、28Cから30Cに太くなっても、ほぼハンディはありません。しかしながら、ライド中に身体をフレッシュな状態に保つことができます。

加速力を上げたい
少しでも軽いタイヤ……を選びたくなるでしょうが、総合的に見るとワイドタイヤがオススメです。同じ性能であれば軽いほど有利なことに間違いはありません。ですが、重量差が小さい場合は、転がり抵抗の低減やトラクションの向上など、総合的に判断するとワイドタイヤに優位性があります。

パンクの可能性を減らしたい
重量や転がり抵抗よりも、パンクガードや耐パンクベルトを採用しているタイヤを選びましょう。耐パンク性の向上と転がり抵抗の低減は相反する関係です。原則として、タイヤの構造層を増やすと転がり抵抗は増加します。また、使われる素材によってもパフォーマンスは変わります。例えば、トレッドゴムの下にあるカーカスにポリアミドを使用するとパンク耐性は下がりますが、ケブラーよりも転がり抵抗を小さくできます。反対にケブラーはパンク耐性を向上させますが、転がり抵抗を大きくします。トレッドゴムの厚みも、薄い方が転がり抵抗は小さく、パンクのリスクは高くなります。

これは最初の質問に戻りますが、あなたがどのような走行を望んでいるのか、何を求めているのかによります。パンクを避けたいのか、それとも他の要素がより重要なのか? しっかりと考えてみてください。

最高級レーシングモデル“フュージョン5”からトレーニング用“チャレンジャー”まで、数多くの製品を手掛けるエンジニアのジョエル・バレさん

Q:25Cと30Cの違いはわずか5㎜だとも言えます。それでも大きな差を感じるのはナゼですか?

A:同じ銘柄のタイヤなら両者の違いは、路面との接触面積と形状です。グリップ力が高くなると、ライダーは転倒しにくくなります。例えばカート用トラックでの走行テストでは、30Cを使ったライダーが最速でした。これはフットプリントの違いによると考えられます。

Q:タイヤを長持ちさせるコツはありますか?

A:ライド後、空気圧を少し抜いてください。トレッドやサイドウォールにかかる負荷を下げることで、タイヤの寿命が延びます。また、日陰に保存するとオゾンの影響を減らせます。空気を抜く目安は1barで十分。タイヤ表面を指で押して、少し柔らかくなったと思えるほどで十分です。

Q:ワイドタイヤ時代の適正空気圧の見つけ方

A:3年前、「体重70㎏の人は、まず空気を7bar入れてから0.2barずつ下げてベストセッティングを探す」と申し上げました。あれからリムもタイヤもワイドになり、チューブレスレディの普及も進みました。基本は変わりませんが、最初の設定を6.5気圧からスタートします。エアゲージを使って、0.2~0.3barずつ下げてベストな内圧を探します。

最終的には6barぐらいで落ちつく人が多いと思いますが、コースやフレーム、ライダーの好みによって微妙に差があります。以前と比べると、タイヤの断面積が大きくなった分だけ、ナロータイヤ時代と比べると0.2barの違いでも空気量は大きく違います。言い換えると、それだけシビアな空気圧の調整が求められるようになりました。リムの内幅が広くなったことで、空気圧を下げても安定性が保たれるようになっているので、いろいろ試してみてください。

Q:25Cと28Cでは同じ空気圧でも空気量は違いますが、下げる幅は変えなくていいですか?

A:基本的には、変える必要はありません。28Cで6barなら空気圧を下げすぎていることはない。度を過ぎればタイヤがしなやかになりすぎて、走行安定性が損なわれる可能性もありますが、少しずつ試していく分には安全です。

Q:ユーザーに守ってほしいことは?

A:安全にかかわることなので、タイヤの寿命を守ってほしいです。体重や路面状況、空気圧などの様々な要因によって異なりますが、トレッド部にインジケーターを設定してありますので、交換の目安にしてください。