素材表示を超えるソックスの作り方
MBウエアのティツィアーノです。前回は自己紹介をさせていただいたので、今回は製品ついて少し話をしたいと思います。
【新しいフェーズを向かえて……】
プロロード選手からのフィードバックを元に、最新の織機で作った“ファンソックス”は、発売と同時に高い評価を得ることができました。現在、より良い製品作りを目指して、会社を支えてくれる人たちとのコミュニケーションを重視しています。
例えばデザイナーは3人いますが、1人は外部スタッフです。新しい製品やコンセプトが必要になったときは、ファッションブランドのデザインも手掛けている人に違った視点から協力を求めます。
そして、自社では素材を作れないので、糸の供給をしてくれるFulgar社とも緊密に連絡を取り合っています。私たちが採用しているQ-SKINは紡糸の過程で銀イオンを挿入したポリアミド6.6という合成繊維で、発汗時でも雑菌の増殖を防ぐので、防臭効果もあります。しかも伸び縮みに耐えうる靱性に優れ、コットンの10倍以上の耐摩耗性と染色性に優れる素材です。
残念なのは、この素材の良さを自分で体験しないと分からない。洋服やソックスを買うときに素材のラベルをみますよね? なんとなく素材の名称をみて分かったような気持ちになりますが、実際には表記を見ても質は理解できません。なぜなら、ポリプロピレンとかポリアミドと記載されていても、メーカーやグレードによって性能もコストもまったく違います。
ここ数年、ライバルブランドも以前よりは質が向上していますが、同じ素材でも糸の織り方によって肌触りは変わります。現在、私たちの工場には最新の100台の編み機がありますが、台数を増やすことよりも、常に新しい編み機を導入することに力を入れています。プリンターも同様ですが、最新の機材は生産性や効率も高めてくれるだけでなく、品質のためにとても大切なのです。
最善で必要条件は、それぞれの進化とともにあることです。アイデア、デザイン、素材、加工技術などソックスの性能は数年ごとに伸びています。他のスポーツからヒントを得ることもありますし、そこから自転車競技の特性を学ぶこともあります。
着圧ソックスはランニングでは効果を発揮します。ですが、自転車用として考えると、空気抵抗を減らすかもしれませんが、それはごくわずかです。それよりも血流を妨げてしまうデメリットが心配です。
MBウエアのエアロソックスは特殊な“ライクラ”(ポリウレタン弾性繊維)を使っています。この繊維は伸縮性がわずかしかないので、足首の細い選手しかを使えません。空気抵抗を減らすには、それくらい弾性の強い繊維でなければ意味がないのです。多くの人には関係がない。ジャージ用のライクラ素材を使うメーカーもありますが、効果は期待できません。
【シューズ内の環境を最適化する】
上質なソックスと同様に、カスタマイズされたインソールはライドの質を高めてくれます。特に扁平足の人にとって、インソールはとても重要です。シューズやソックスのデザインを気にする人は多いですが、本当に大切なのはシューズの中で、いかにベストな形に保つかです。
ソックスも足の機能を妨げることなく、自然で快適な履き心地を実現するのが理想です。繰り返しますが、MBウエアが最新の機器でモノ作りをするのは、シームレス技術など最新のテクノロジーで解決できる問題があるからです。
ほかにも、補強や耐久性はメーカーの技術で解決できることもあります。“シベリアソックス”は肌に触れる部分はすべてメリノウールですが、つま先、足裏、ヒール周辺は異なる素材です。理由はメリノウールだけだと、耐久性がなくなるからです。シューズと接触し、耐久性に関係する部位は繊維や構造を変えます。耐久性が低いソックスは作りたくありませんし、装着感を高めるためにシームレステクノロジーで接着するという方法を取っています。
最後に、もうひとつ。
これまで話してきたことは、MBウエアの表示がある製品だけです。私たちの会社は他ブランドの製品の製造も行っていますが、ミーティングの最初に出るのはコストの問題です。相手もあることですから、あまり詳しいことは話せませんが、MBウエアと同じ品質で出しているブランドは2~3しかありません。
ソックスの品質は長時間使ってみないと分かりません。最初に足を入れたときの快適性が継続するか……それは繰り返し洗濯してみないと判断できないのです。ソックスの性能や品質を満足に説明できているブランドはないので、それは今後の課題だと思います。そして、ソックスの可能性を知るため、一度、私たちのソックスを使ってみてください。