パリ〜ルーベ2021覇者が教えてくれた、 プロ選手がホイールに求めること。
ソニー・コルブレッリ選手とは
2021年、パリ~ルーベで優勝したソニー・コルブレッリのインタビューをお届けする前に、私から彼のことを簡単に紹介しましょう。彼がアルプスの山々のふもとにある小さな町に生まれたのは32年前。プロ生活を始めたのは2012年からで、それはサイクリングと自転車の大きな変革期と重なります。
彼は新しいテクノロジーとテクニックを上手に操る選手です。レースではためらいのない、目標にフォーカスする走りが特徴的ですが、同時に、準備やバイクパーツの選択段階では細心の注意を払います。もう1つ重要なのは、新製品の開発とテストに積極的に取り組んでくれるので、メーカーにとっては完璧なパートナーです。製品を限界の状態まで追い込むだけでなく、繊細な感覚でフィードバックを返してくれます。
人に取り囲まれてチヤホヤされるのを好まず、いまだに生まれた町で暮らしています。90%の住民が彼のことを知っていて、トレーニングも、子供たちや奥さんと一緒のサイクリングでも、誰にも気を遣うことなく出かけます。家族をとても大切にし、レースではおじいさんの小さな写真をいつも身に着けています。自転車の世界へ冒険旅行に出発した時からの最大のサポーターなのです。
FSA/VISION マーケティング担当 マテオ・パラッツォ
Q1お気に入りのVisionホイールは?
■Colbrelli(コルブレッリ)
メトロン60です。私にとっては真の万能ホイールです。
Q2 1シーズンで何種類のVisionホイールを使いますか?
■Colbrelli
80%のレースでメトロン60を使いますが、アップダウンの激しいステージではメトロン45を選んでいます。
Q3 路面に応じてタイヤを使い分けますか?
■Colbrelli
ロード乗りの伝統として、以前ならチューブラーと答えていました。しかし、現在はクラシックレースではチューブレスを選びます。なぜなら、耐パンク性能と非常に低い空気圧で使えるなど、数多くのアドバンテージがあります。
Q4 路面に応じてどのようにタイヤを選びますか?
■Colbrelli
チューブレスタイヤが大きく進化し、とくに石畳や荒れたセクションですばらしいアドバンテージが得られるので、以前のようにチューブラータイヤを使うことはないですね。チューブレスこそ未来のタイヤであり、あらゆる状況で安全に使うことができます。
Q5 レースで使うホイールの選択を誰かに相談しますか?
■Colbrelli
昨年のパリ~ルーベはリムハイトの高いホイールで、後輪には32㎜の太いタイヤを履きました。その選択は良くないという意見が多かったですが、自分の選択に自信を持っています。チームメカニックや元プロ選手たちの意見は真剣に聞きますが、人の意見に左右されることはありません。なぜなら、ホイール選択は個人差も大きいからです。
Q6 理想のホイールとは?
■Colbrelli
速くて、反応性の高いホイールを求め続けてきました。そして、ハイプロファイル(55/60㎜)ホイールで、リアには太いタイヤを履くのが好きです。もう一つ大切なのがハブです。可能な限りスムーズに回転し、ペダリング時にすぐにエンゲージする遊びが少ないもの、VISIONが採用した新型PRSハブはまさに理想の製品です。
Q7 リム高は走行感に影響しますか?
■Colbrelli
影響はまちがいなくあります。ハイプロファイルのホイールは剛性とスムーズさにおいてアドバンテージがあり、まさに自分が求めているものです。リム高30㎜のホイールと比べてみれば明確に分かりますが、レースの世界ではそのようなリムの低いホイールはなくなりました。
Q8 プロ選手と週末ライダーには違うホイールを勧めますか?
■Colbrelli
リム高50㎜はあらゆるタイプのレースに使えるホイールと言えます。私はいつも60㎜ですが、横風が非常に強いときには低いリム高を選びます。それでも前輪のみで、後輪には少なくとも55㎜を選びます。週末ライダーには、40㎜以上で自分に合うホイールを1モデル見つけることをお勧めします。
Q9 自分のホイールはどのように選ぶのですか?
■Colbrelli
走行ルートと気象状況ですね。とくに横風と高低差です。上りが4000~5000メートルに達するステージでは、ロープロファイルホイールは役立ちます。
Q10 フレームとホイールには相性がありますか?
■Colbrelli
ラッキーなことに、そのような問題に悩んだことはありません。でも、昨シーズン使ったフレームとメトロンの相性は素晴らしく、その前のシーズンにとてもいいと感じていた組み合わせを上回りました。フレームとホイールの性能は、相乗効果を高める方向でどちらも進化していると感じます。
Q11 同じく、ホイールとタイヤの相性はありますか?
■Colbrelli
ホイールにとって、フレームよりもタイヤとの相性が重要なのは間違いありません。その点、私はずっとラッキーでした。ホイールとタイヤの関係はとても繊細なものです。両者の関係が完璧でなければ、ペダリングパワーを理想的なかたちでリリースできません。パリ~ルーベでは2度のパンクをシーラントが自動的に修復してくれ、立ち止まる必要がありませんでした。
Q12 ホイール剛性に応じて、タイヤの空気圧を調整しますか?
■Colbrelli
普通はしません。リム高や剛性にかかわらず、基本的に同じ空気圧を維持しています。
Q13 タイヤの理想的な空気圧はどのように決めますか?
■Colbrelli
変数となるのは外部要因です。気象条件からコースの路面状況に至るまで、変数の要因となります。
Q14 価格差は、ホイールにどのような違いをもたらしますか?
■Colbrelli
数多くの明白な違いがあります。たとえば安価なホイールはスプリントでリムの曲がりを感じます。ダンシング時にも大きなたわみが生まれ、パワーの80%を失うような気分になります。
リムブレーキの頃、完全に整備された自転車にもかかわらず、全力を出すとリムがブレーキシューにこすれたものです。質の高いリムはカーボン層の構造や樹脂の違いから剛性が高く、変形しません。ハブにも大きな違いがあります。ホイールの性能を作り出すベースになるパーツですから。
Q15 ホイールの剛性は、高ければ高いほどいいですか?
■Colbrelli
私にとっては、剛性が高いほどいいホイールです。クラシックレースでも剛性を求めます。理論上は、石畳のセクションではある程度フレキシブルなホイールの方がいいかもしれないのですが。VISIONは大半の状況で使えるバランスのホイールを供給してくれます。
Q16 空力性能、重量、剛性・・・ 大切な順番は?
■Colbrelli
重量について、実は考えたことがありません。選手になってからホイール重量を計ったことが2度ありますが、ただ好奇心からでした。大切なのは、どのようなフィーリングのホイールかです。スムーズさとスピード感がもっとも重要です。
Q17 ホイールの選択で優位性は生まれますか?
■Colbrelli
レースでは機材選びがとても大切です。そのなかでもホイールとタイヤの選択は重要です!
Q18 スポークテンションの調整をしていますか?
■Colbrelli
自分からメカニックに依頼することはありません。彼らが常に最適に調整してくれます。スポークテンションのチェックはしませんが、ホイールのたわみが大きすぎないか、正しく回転しているかというチェックは必ず自分で行ないます。
Q19 体重の増減でホイールの選択も変わりますか?
■Colbrelli
いいえ、ホイールのフィーリングで90%決定します。自分の体重は考慮に入れません。
Q20 ホイールの進化を感じますか?
■Colbrelli
間違いなく! フレームからタイヤまで、近年、大きな進化をしていますね。以前と比べて、別世界になりました。11年のプロ生活で、フレームやホイールがすべて変化しました。ディスクブレーキだけが原因ではなく、素材レベルから変わりましたね。ハブに投入される技術も進化しました。
Q21 その進化はパフォーマンスにつながっていますか?
■Colbrelli
もちろんです。毎年新しい記録が作られています。30年間破られなかったような記録も破られました。サイクリングがフォーミュラ1になったと思います。
Q22 ホイールが原因でレースに負けたことはありますか?
■Colbrelli
残念ながら、何年も前に一度あります。メカニカルな問題が起きてリタイヤしました。
Q23 ホイールのおかげでレースに勝ったことはありますか?
■Colbrelli
はい、ホイールのおかげで勝ったと思えるレースが、いくつかあります。厳密な検証はできないですが、私はそのように感じました。最近ライバルたちから、おまえのホイールは自動的に進んでいるようだな、と言われましたよ。
Q24 新車購入予算が4000ユーロなら、何%をホイールに使いますか?
■Colbrelli
自分に必要な性能を持つホイールに、少なくとも予算の半分を投入します。ホイールはタイヤと共にアスファルトと接触する箇所であり、サイクリストにフィーリングを伝達する部品です。高品質なホイールとタイヤへの投資は、自分のパフォーマンスをフルに発揮するためのベース作りなのです。
Q25 週末ライダーたちに、ホイールについてのアドバイスをください。
■Colbrelli
わかりました。3つの要素があります。
◇スムーズさ
いいハブを持つスムーズなホイールは、ペダリングを向上させてくれ、パワーの損失を防ぎます。
◇剛性
踏んだときにたわまないホイールはすべての力を前進力に変えてくれ、効率の高いペダリングが可能になります。
◇重量
これを挙げるのは、週末ライダーの皆さんは軽量性を重視するからです。私自身はすべてのレース、ステージで同じバイク、同じパーツを使うので、重量が大きな違いを生むとは思えません。クライマーでない私にとって、7.3~7.8㎏のバイクがあれば、あらゆる状況で問題は一切ありません。
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