自転車好きの子供たちにイタリアがしていること
近年、ヨーロッパのレースシーンはR・エヴェネプールやT・ポガチャルなど若い選手の活躍が著しい。日本でも選手育成の必要性は語られているが、なかなか思うように進んでいない。
イタリアでは、どのように子供と自転車の関係性を築いているのか? カレラの社長シモーネ・ボイファーバへのミニインタビューをしてみました。
Q: 今シーズンから機材を供給し始めたチーム・ビエス・カレラについて、どのようなチームか紹介してください。
シモーネ
チームには60名のライダーがいます。内訳はコンチネンタル13名、U18が12名、12~16歳が10名、そして25名のキッズです。
Q:キッズが多いですね。日本では子供が自転車レースを始めるのは考えにくいです。
シモーネ
そうですか。子供たちが自転車を始める理由はそれぞれですが、親や友人、テレビがきっかけとなる子が多いですね。ただ、20年前に比べると、ロードレースを志す子供たちは減ってきています。
Q:淋しい話ですね。
シモーネ
そこで私は子供たちがロードレースを楽しめるように機材を供給することにしました。
チーム・ビエス・カレラはチームが機材を所有し、子供たちに無償でロードバイクを貸し出しています。
Q:それはいいですね。子供たちはどのようなレースを?
シモーネ
子供たちのカテゴリーはジョヴァニッシミ(Giovanissimi)と呼びます。これはイタリア語で『とても若い』という意味です。G1カテゴリーは7歳、G2は8歳、そしてG6が12歳です。
Q:キッズを指導をするときに注意すべきことは?
シモーネ
いちばん大切なのは安全に走ること。乗り方や危険を避ける方法、交通ルールなどが基礎となります。ゲームとして楽しめるように工夫が凝らされ、夏は小さなトラックで指導を行なうこともあります。
父はサッカーグラウンドの回りにトラックを作って指導していましたが、ショッピングモールの敷地で行う場合もあります。いずれにせよ、クルマがこないようにクローズした状況で行ないます。
Q:内容はどんな感じですか?
シモーネ
G1, G2カテゴリーは3角コーンを使ってスラローム走行などハンドリングを練習します。時間にしたら1時間ちょっとで終わらせます。
G3、G4カテゴリーはスラロームに加えて、小さな障害物を越える練習をします。子供たちが楽しめるように、ゲーム的な要素をできるだけ取り入れるのがコツです。
経験を積んだ後にブレーキのかけ方、ブレーキを使うべき時の判断、スプリント、集団走行、カーブの曲がり方などを学びます。さらに乗り出し方からクリートを使うペダルの使い方へと進みます。
Q:トレーニングを行うペースは?
シモーネ
1週間に2日。そのうち1回はレースをします。
レースの距離は以下が目安です。
G1: 2~3 km
G2: 5~6 km
G3: 7~8 km
G4: 10~12 km
G5: 14~15 km
G6: 18~20 km
Q:レースはどんな形式で?
シモーネ
一番多いのはサーキットにして行なう伝統的なレースです。他にも、200~400mの直線コースで、駆けっこのように速さを競います。たとえば子供たちが30名いれば、5名ずつに分けて競走し、トップ3名が勝ち抜いて次戦へ。勝ち抜いた子が優勝するエリミネーションのシステムです。
また、広場や駐車場に小さなテクニカルなサーキットを作って、速度の高くないテクニカルなレースもあります。
Q:本格的なトレーニングはいつから?
シモーネ
心拍計やパワーメーターを使い始めるのは13~14歳ころからです。
13歳以上は、大人のカテゴリーまでが次のように分かれています。
・イゾルディエンティ(Esordienti)13&14歳カテゴリー
初心者、という意味です。 30-50㎞程度のレースをします。
・アリエヴィ(Allievi) 15&16歳
生徒たち、という意味です。 レースは60-90㎞
・ユニオレス(Juniores) 17&18歳
ヨーロッパ選手権や世界選手権も行われる国際自転車連盟の公式カテゴリーです。レースの距離は90~130㎞。
・アンダー23(U23) 19~23歳
昔はディレッタンティ(Dilettanti)と呼ばれ、未だに19-23歳の選手をそのように呼ぶこともありますね。
Q:最近は若い選手の活躍が目立ちますよね。
シモーネ
そうですね。レムコ・エヴェネプールやタディ・ポガチャルがいい例ですが、ヨーロッパでは選手の成熟が早くなっています。 かつてはアリエヴィから競技を始める選手も多かったそうですが、現在は養成システムが進化すると同時に、選手へのプレッシャーも大きくなっています。
Q:ところで男女比は、どんな感じですか?
シモーネ
女性2割、男性が8割です。この比率は6歳から18歳まで変わりませんが、以前と比較すると13~18歳の女子が増えているとも言えます。
Q:ところで、学校の部活との両立はどのようにしているのですか?
シモーネ
イタリアでは学校にチームはなく、チーム・ビエス・カレラのような地域にあるクラブチームで競技を続けていきますね。
Q:皆、プロ志望ですか?
シモーネ
はい、100%ですね。でも、プロになるのは1%以下です。日本でも子供たちがロードバイクで楽しめるようになるといいし、ジュニアレーサーを作っているので、そのお手伝いができるといいですね。