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Keoブレードの革新:開発主管アレックス・アヴォに訊く

前回のエクスポートマネージャーのパスカル・ナヴァッロに続き、今回は開発部門の責任者のショートインタビューをお届けします。開発部門の概要と製品開発方針、新製品のKeoブレードについて、いくつかの質問をぶつけてみました。

自己紹介をしてください。

開発グループに所属するアレックス・アヴォです。ツール・ド・フランスはもちろん、パリ〜ルーベ、世界選手権、MTBのワールドカップはクロスカントリーだけでなくダウンヒルもフォローするほど自転車レースが好きです。

若い頃はクロスカントリーやロードレースでフランスのナショナル選手権に出場していました。走行距離こそ減っていますが、現在も週末はかならず自転車に乗ります。そして、ペダル開発の設計から製造工程までを統括して8年になります。

あなたの率いるグループには何人のスタッフがいますか?

開発グループにはR&D(研究開発)、デザイン、品質管理、製造、販売の各部門があります。R&Dチームは3名のスタッフが献身的に取り組んでいます。

Keo Bladeをペダリングしたときの剛性と堅牢感について教えて下さい。

ペダルの主な役割は、ライダーのパワーを効率的にクランクに伝え、最適なフィーリングを提供することです。ライダーがペダリング時に高い剛性と堅牢性を感じるなら、それこそが我々の設計意図です。

ペダリング時の質感は、ライダーにとって優先順位の高い性能です。わずかな違いが、大きな違いとなる繊細なファクターの積み重ねなので、R&Dチームにとって永遠のテーマだとも言えます。

もう少し詳しく説明すると、重量と接触面積から算出されるパワーウエイトレシオを指針に開発しています。この数値が効率的に力を伝達できるかを示します。ペダルを軽量化するのは簡単ですが、同時にパワー伝達性能の維持させようと思うと簡単ではなくなります。

それがペダリングフィールに大きく影響するのですね。

はい。そして、このフィーリングには、ペダルとクリートの接触面積も重要で、面積が大きいほど力が効率的に伝わります。軽量化と接触面積の拡大を両立させ、世界トップレベルのパワーウェイト比を実現しているのがLOOKのアドバンテージなのです。

ペダルとクリートの相性は、想像以上に走行感に大きく影響します。市場にはLOOKのクリートを模倣した製品も多いですが、素材や寸法のわずかな違いが性能に大きな差を生みます。私どもの製品が模倣品とは異なる高いクオリティを実現しているのは、細部にわたって時間をかけて熟成させてきた結果です。

先日、パスカルにも同じ質問をしましたが、理想的なペダルの機能とは?

安全性が第一です。クリップレスペダルは必要なときにリリースしやすいのが特徴で、安全性を重視して開発されました。また、ペダルはライダーとバイクの重要な接触点で、大きなパワーを受け止めます。そのためパワーを受け止めて壊れない耐久性、落車時にも壊れない強度を有していることが大切です。

新モデルの開発において重要な要素は?

製品の評価とはラボの数値でなく、ユーザーが決めるものです。したがって、製品に触れた人たちから多くのフィードバックを収集します。ライダーやバイクショップから多くの意見を集め、解析して、それを新製品に活かします。

ある改良を実現するには、どのようなファクターが関連するのか、過去の経験が答えを教えてくれることも多い。したがって、過去の蓄積は失敗も含めて、財産です。

新製品の方向性が決まれば、あとは極端な試験やプロ選手によるフィールドテストを行います。開発期間は3年、新素材を使う場合、海水に浸かることも想定します。他にも耐衝撃性や摩擦試験を含む15種類のテストを自社の研究室で行います。

いくつぐらいのプロトタイプを作るのですか?

新型Keoブレードは20種類の設計図を作成し、3Dプリンターで3つのプロトタイプを作りました。その後、金型を作り、プロトタイプを製造しました。

開発を進めていく中で興味深かったのは、スピンドルの形状でした。内部パーツなのでライダーからは見えませんが、改良したなりのフィードバックがある。R&D部門が想定したフィードバックになるまで変更を加え続けた結果、3年かかりました。

レベルの高いサイクリストは固定力の高いバネの方がいい?

エントリーライダーには軽め、慣れてくれば強いリテンションを提供していますが、いずれの製品でも、希望に応じて交換可能です。

かつてリテンションレート20を発売していたこともありますが、強いライダーでも20は強すぎることがあります。あの製品はトップレベルのレースのゴールスプリントで、バイクと身体が離れるような姿勢でもペダリングを可能にするためのものです。

現在もトップスプリンター向けに24も供給していますが、崩れた姿勢でも2000ワットを発揮する選手用です。24Nmのリテンション力ではペダルから足をリリースするのが大変です。一般のライダーには必要ありません。
スキーレーサーが転倒してもスキーが外れないように設定するのと同じです。

スタック、Qファクター、フロート角度……これらの要素にどのようにアプローチしていますか?

いい質問です。社内でも常に議論があります。これらの質問に即答できればいいのですが、それは5年後、10年後のペダルについて答えるのと同じぐらい難しいですね。

質問から逸れますが、現在、パワーメーターへの要望が増えています。パワー測定をする上で、ペダルはクランクよりも精度の点で優位です。5年後にはロードバイクの25%がパワーセンサー付きになると考えており、パワーメーター付きペダルの可能性が拡がっているのです。もう少し軽量化もできると思うので、市場規模が大きくなるつれて進化するでしょうね。

新型Keoブレードの空力特性向上に意味はありますか?

ペダル前面の空気の流れを改良し、ペダル単体の空気抵抗が2%ほど低減しました。わずかな改善ですが、トップ選手には意味があると考えています。

残念ながら、今日は予定されていた時間を過ぎてしまいました。また、近いうちに時間を作って下さい。

ええ、楽しみにしています。