2022年、カレラは新Phibraでリスタートします。
イタリアのレーシングフレームメーカーCarreraは新体制になりました。創業者のダビデ・ボイファーバから、息子のシモーネへと世代交代し、新しい社屋とスタッフでスタートを切っています。
次回、紹介するときはイタリアへ行き……と思っていたのですが、行けないまま多くの時間が過ぎてしまいました。予定していたニューモデルのリリースも遅れてしまい、ご迷惑をおかけしております。というわけで、ここしばらくニュースのなかったカレラの新社長、シモーネのミニインタビューをお届けします。
ー 今、あなたを幸せにしてくれることは、どんなことですか?
シモーネ
天気のいい日に自転車に乗っていると幸せだなって感じますし、会社の成長を見守っているのも幸せな瞬間です。新製品の開発も進んでおり、“Phibra Next”(フィブラ ネクスト)のディスクブレーキ仕様もほぼ完成しています。
ー 間もなくローンチできそうですか?
シモーネ
イタリアのイベント等では最終プロトタイプを見ていただいています。コロナ渦の影響を受けてしまい市販モデルの具体的なローンチを発表できませんが、体制をできる限り早くご覧に入れたいと思います。
ー では、コロナがもたらした変化で、ポジティブな面はありますか?
シモーネ
そうですね……都市封鎖が解除されて以降、ヨーロッパではサイクリングを楽しむ人が劇的に増えました。新規ユーザーが増えたのは、自転車業界にとって数少ないポジティブなニュースと言えるでしょうね。
ー 増えた人たちとは、新規ユーザーですか?
シモーネ
エントリーレベルのバイクを買う方が多く、中でもグラベルバイクの人気が高いですね。
ー カレラといえば、レース用ロードバイクという印象ですが、あなたが社長になって、なにか変化はありましたか?
シモーネ
基本的な精神というか、核となるモノに変わりはありません。ただ、以前よりもマーケティングと広報活動にも積極的に取り組む必要性があるので、ソーシャルメディアやプレス担当者を採用しました。
そして、カレラファンのインフルエンサーと新たなコラボを始めました。同じビジョンを共有できる人たちにテストバイクを渡して、ソーシャルメディアへの露出を増やしたり、試乗をしてもらったりしています。
ー 少しプライベートな質問も。カレラのロードバイク以外で好きな乗り物は?
シモーネ
SUVやスポーツカーが好きです。でも、夏に1960年代の古いベスパに乗るのは格別ですね。
ー 古いベスパ! 自分で買ったモノですか?
シモーネ
いいえ、家にあったバイクです。(創業者の)ダビデがまだ若手の監督だった頃、そのベスパを使ってジロ・デ・イタリアに優勝したG・バッタリンとかR・ヴィセンティーニのトレーニングをしていたそうです。私が選手だった頃も使ってくれた、思い出の1台なんです。
ー 自転車に話題を戻しましょう。今年になってから、どれくらい乗りましたか?
シモーネ
今年は400㎞くらい(2月下旬)かな。この1年だと6000㎞くらいですね。
ー 昨年の6000㎞は、コロナ渦前よりも多い?
シモーネ
コロナとは関係ないですね。以前と変わりません。気持ちとしては距離を伸ばしたいけど、時間を調整するのが難しそうです。
ー 漠然とした質問ですけど、イタリアのサイクリストたちは元気ですか?
シモーネ
元気にしていますよ。ここ5年ぐらいは女性が増えていて、いまだにグランフォンドの参加者も増え続けています。また、eバイクもやはり大きな助けになっていると思います。トレーニングをしない人でもサイクリングを楽しめますからね。
ー あなたの仕事は、経営のほかどんなことをしていますか?
シモーネ
デザイン、設計、パブリック・リレーション、販売……すべての部門をフォローしています。サプライチェーンやR&Dも私の守備範囲です。
ー そのなかで得意なものと苦手なものを、それぞれ教えてください。
シモーネ
得意かどうかは、誰か第三者に判断してもらったほうがいいかもしれないですね。好きかどうかなら……新製品の開発は好きです。
基本的に全部おもしろいので、嫌いなものはないなと答えようと思ったんですけど……現在、自転車業界は空前の好景気となり(パーツなどの)供給が非常に悪くなっています。この状況をじっと待っているのは得意と言えないです。
ー ダビデは元気にしていますか?
シモーネ
おかげさまで、元気にしています。「好きなことやり、頑張りなさい。それが、自分にとって辛いことであったり、努力や犠牲を伴うことであっても、好きなことをがんばりなさい」と、いつも背中を押してくれます。
ー 同じようなことを、ロードレースの魅力としてダビデが語っていましたけど、あなたにとって、ロードレースの魅力ってなんですか?
シモーネ
レースはロードバイクの魅力と情熱に満ちています。スピードが楽しいし、選手が最大の努力をしている姿は美しい。いろいろな戦略が繰り広げられ、最後の数キロは知的で、パワフルな展開となります。そのときのシチュエーションによってやるべきことが違うので、選手やチームの動きの意味を考え、観る者がストーリーを想像し、観客はゴールで答え合わせをする。走るだけでなく、観るのも楽しいスポーツだと思います。
ー あなたはプロ選手にまで上り詰めましたが、もし、15歳の自分に、アドバイスができるとしたら、どんな言葉を贈りますか?
シモーネ
自分を信じろ。トレーニングをがんばって、夢を追い続けろ。と言うでしょうね。
ー 君がジロ・デ・イタリアで勝つことはできないよ……ではなく?
シモーネ
ええ、言いませんね。きっとプロ選手となって輝かしい戦績を収めることは、とても栄誉なことです。特にイタリアのような国では、特別だと思います。
でも、勝てなくてもロードレースから学べることはたくさんあります。たとえば私はイタリアのメーカーでも数少ない、プロ選手を経験した経営者になれました。ライダーにとって必要なモノはなにか? 他人の言葉ではなく、私は自分の気持ちと向き合えばいいのです。経験からナニを学ぶか、それがもっとも大切なことです。
ー ニューモデルについて、何か具体的に言えることはありますか?
シモーネ
“Phibra Next”はケーブルを内蔵し、スマートなスタイリングに仕上がりました。意のままに向きを変えるハンドリングと抜群のコントロール性を発揮するブレーキング性能は、レースだけでなく、どんなときにも最高のエクスペリエンスを提供します。他にもエントリーレベルでニューモデルを予定しています。さらにE-Bikeの開発にも着手し、パワーユニットメーカーとグラベルロードについても話し合いを進めています。2022年はグラベルロードもお目に掛けることができると思います。
ー 最後に、家族にも言ったことがない秘密をひとつ教えてください。
シモーネ
家族とはどんなことも話し合う関係ですから、秘密はないですね。ただ、家族も知らないことはあります。計画しているエントリーモデルがあると言いましたが、そのモデル名は誰にも伝えていません。
先に言っておきますが、秘密なので教えませんよ。
ー それは2022年に知ることができそうですか?
シモーネ
そうですね、楽しみにしていてください。